AIで仕事は無くならない

AIで仕事が無くなるのか。

 AIの発達により銀行を初めとする仕事が無くなるとのとの議論がいまだに存在するが、この議論の川上にいるのはAI開発側のポジショントーク、もしくはセールストークであり、現実にAIによって様々な仕事が無くなる可能性は極めて低い。特に日本においては。

 

Excelにより仕事が無くなったか。

 AIが一般化するずっと以前から、Excelが一般化しており、多くの企業で導入がされているが、Excelにより効率化がなされたかというと言い切れない。もっと言えば、Excelで関数を利用できている企業や社員も少ない。せいぜいSumやIf関数ぐらいで、Vlookupやピボットテーブルを利用できる社会人になると、非IT系では一気に減少する。

 そして、SumやIf関数が出来ない彼らが行っている作業は基本的には単純作業で、マクロや関数を駆使すれば一瞬で終了する事を数時間かけて作業しているのが実態だ。

 下手にマクロ化してしまうと、「ブラックボックスになってしまう」との指摘を受けたり、場合によっては「楽をしている」「サボっている」という評価となるのが日本社会だ。これは日本を代表する大企業でも中小企業でも変わらない。日本独特の文化だ。

 

Excelを「利用」すれば自動化出来たり、確実に早くなる仕事であっても、導入しないか認めない。エクセルでSumで出した合計金額を電卓で計算し直してチェックをするのが2018年現在の日本の金融機関だ。

 

もちろん、AIで仕事が減少する人もいる

 AIの発展により仕事が消えるまで行かなくても減少する人もいるだろう。しかしその仕事は、AIを導入する事が受け入れられたり必要となるような「複雑」で「高付加価値」で「高精度」が求められる仕事だ。

 

 例えば会計の世界においては、町中の税理士事務所の仕事にAIが直接影響する可能性は低いが、国際展開している大企業等において、各国で作成された財務諸表を連結PKGに変更して、IFRSやUS-GAAPにコンバージョンする様な仕事であったり、自社において利用できるタックスプランニング(税務戦略)をリストアップする等の作業についてはAIが活用できる可能性が高い。

 

 だが、過去に事例が無いようなタックスプランニングや節税スキームを構築する場合には、やはり人の力が必要になるだろう。AIで仕事が減少するのは、頭脳労働者のうち最上流ではない上流層であって、銀行の窓口等の仕事には影響しない。

 

AIブームはそろそろ終わり、活用の段階に進む。

 AIの発達により銀行を初めとする仕事が無くなるとのとの議論がいまだに存在する

もっと言えば、既に融資の可否を判定するスコアリングなんてとっくの昔に存在しており、AIの発達によって初めて出来るものではない。プロ棋士を次々と破る事で話題になったAlphaGoにより話題になったAIだが、そのブームは終わりが見え始め、より足が地に着いた活用の段階に進みだしている。実際に仕事の場でビックデータをいかに学習させ、どの様に分析をさせるのかを具体的に考える段階だ。仕事や世界を今すぐまるごと変えるような段階ではない。

 

 

 もっともそれは、ディープランニングやビックデータを否定するものではない。この技術は有用であり、ブロックチェーンを利用したデータのリアルタイム性や正確性を利用すれば様々な分野に活用できる事は間違いない。しかしAIが人間を超えるのはまだまだ先であり、その前に人間の意思決定や価値観のシステム化が必要となってくるだろう。

 AIも結局は1つのツールでしかない、それをどの様に使うかが問題であり、それが難しい。今回のAIブームは過去3回目のブームだという。今回のブームがまたブームで終わることなく、利用が一般化されるためには、AIを盲目的に信仰するのではなく、活用方法を皆が考えていく事が重要だ。

FXのルールがヨーロッパから変わりだした。

7月末からヨーロッパではFXのルールが大きく変わります。

日本にも大きく影響しそうなので要注目です。

 

ヨーロッパでは高レバレッジやボーナス提供禁止になる。

7月末からヨーロッパではFX等に厳しい規制が行われる。

主なものとしては、

①マイナス残高保護(ゼロカットシステム)の義務化

②ボーナスなどのインセンティブトレードの禁止

③主要FX通貨ペアは最大30倍、マイナー通貨ペアは20倍、仮想通貨は2倍にレバレッジ規制

④ロスカットは50%に統一

⑤バイナリーオプションの全面禁止

と、FXのルールが大きく変わることとなる。特に注意すべき点を見ていこう。

 

 

マイナス残高保護(ゼロカットシステム)の義務化

マイナス残高保護とは、投資家が多額の損失を発生させた時にも、追証が発生しない仕組みだ。

かつて日本の主婦投資家を示す「ミセスワタナベ」がFXの世界で存在感があった時、多くの主婦や投資家が高レバレッジのFXに手を出し、大損を出して追証を食らい、結果多額の借金を背負うという事が社会問題となった。

しかし、このマイナス残高保護がある場合、あくまで損失は証拠金、いわば入金金額までとなる。それ以上の損失が発生しても、その損失はFX会社が背負う物であり、投資家は入金金額までの損失に制限される。

この制度はかつてより海外のFX会社の多くが導入していたが、今回義務化されたことですべてのFX会社が導入が必須となった。

投資家保護制度としては非常に有意義であるため、日本での導入も見込まれるが、既存のFX会社からの大反対が大きくなりそうだ。

 

 

ボーナスなどのインセンティブトレードによるマーケティングの禁止

また、入金時に様々なボーナスがあるインセンティブについても禁止となります。

海外のFXでは入金金額に対して倍程度のボーナスが付与される場合がよくあるが、その様なインセンティブについては禁止となる。

 

また今後は、個人投資家に対するマーケティングや情報発信なども禁止となる。

これは特にバイナリーオプションが顕著だが、あたかも高利益が確約できる事などのマーケティングが散見され、リスクを理解しない投資家が多く損失を食らったことによる。

今回の規制において、バイナリーオプションはフランス等で大きな問題を出していたために、取引自体が禁止となった。

 

レバレッジの規制も日本並みに。

また、日本国内でも最大10倍にすべきだと5月に大きく話題になったレバレッジ規制だが、主要FX通貨ペアは最大30倍、マイナー通貨ペアは20倍、仮想通貨は2倍にレバレッジ規制と日本よりも厳しいレバレッジ規制となる。

 

日本の金融庁も追随しそうだ。

かねてより海外に対して注視している金融庁は、おそらく今回EUが日本よりも先に投資家保護に動いた事に注目をしているであろう。

本規制については、知識のある投資家に取ってはマイナスかもしれないが、知識のあまりない投資家にとっては損失可能性が低くなる。「投資家保護」だけを考えるのであれば有意義だ。

ただ、知識のある投資家にとっては投資魅力が低くなることとなり、EU以外の会社、例えばバミューダなどに拠点を持つ会社に移動していくだろう。

 

「投資家保護」と「投資家のメリット」という、時に相反する事象に対して、はたしてどの様に金融庁が対応し、我々に影響するのか要注目だ。

投資の初心者は個別銘柄の株式投資から始めるべきではない

■本や雑誌、ネットには投資の初心者向けの記事が数多く存在しているが。。。

 

「まずは身近な商品を取り扱っている会社の株式投資から…」

「日本だけに投資をするのは危ないから、FXから…」

「長期投資が重要だから、もしもの時も考えて変額保険から…」

「銀行に定期預金を置いているのであれば、同額をその銀行の社債から…」

といろいろな事が書かれていて結局よくわからない。

 

残念なことにファイナンシャルプランナーと言われる人に相談しても、結局は「〇〇〇なので、この商品を買いましょう」との営業トークになってしまうのが関の山だ。本当の意味で投資の初心者は何から始めたらいいのだろうか。

 

■株式投資は実は上級者向け

株式投資は10万円もあれば始められるので、投資の初心者は株式から始めるべきとのいう話をよく聞く。だが、本当の初心者からすると、「どの株式を買えば良いかわからないから聞いている」という所だろう。たしかに株式投資は10万円どころか、銘柄によっては1万円もあれば始める事が出来る。しかし、その銘柄を選ぶのが難しい。本当は株式投資こそ上級者向けだ。

 

■3,600社の中から投資する1社を選べるか

まじめな投資家がどの株式に投資をするべきか真面目に検討しようとした時、その銘柄の数に驚愕するだろう。トヨタやソフトバンク、ソニーやメガバンクなどの大企業・有名企業が多く並ぶ東証第一部と言われる市場だけでも約2,100社存在し、東証第二部やマザーズ、JASDAQといったベンチャー企業や中堅企業は約1,500社存在している。合計で言うと約3,600社にも上る。初心者に3,600社の中から投資する1社を選べというのは極めて酷だ。投資のプロが統計学や金融工学、また最近だとAIなどを利用して分析している様なものを、個人の初心者に選べというのは無理な話だ。

 

■身近な商品の会社は多くの場合大型株

よく「身近な商品を取り扱っている会社を」とも言うが、多くの人にとって身近な商品や会社というとCMを数多くやっている金融機関や自動車メーカー、食品や日用品メーカーだろう。これらの多くが俗に言う大型株になっており、既に成長しきっている銘柄が多い。業界や企業にもよるので一概には言えないが、すでに大企業であるため今後の大きな値上がりはあまり期待できず、一方で何か企業不祥事があった場合には暴落してしまう可能性が高い。

 

■まずは日経平均連動ETFから始めるのがベスト

初心者はまずは、日経平均と同じように動く日経平均連動ETFから始めるのがおすすめだ。これはニュースや新聞で「本日の日経平均は・・・」と毎日報道されているあの日経平均に投資をするもの(正確には日経平均の金額に一致する投資信託)だ。日経平均とは日本の主要な企業225社の株価から計算している言わば「日本経済」だ。この「日本経済」に投資をするのであれば、これから上昇するか下落するかイメージがまだ付きやすい。また、2017年においては東証全体でみると約12%程度上昇しており、日経平均連動ETFを購入していれば同程度の利益が発生しているはずだ。初心者が素人考えで選択した銘柄よりもシンプルにETFを購入したほうが利益率は高くなると思われる。

 

■なぜ投資信託ではなくETFなのか

では日経平均連動の投資信託でも良いのではないかとの話になるが、投資信託の場合は購入時の手数料が発生し、その手数料は証券会社によっては3%程度となり、購入と同時に3%の損失が発生するが、ETFであれば金額によっては手数料ゼロ円や数十円で購入できる場合もあり、投資信託よりも早期に利益化することが出来る可能性が高い。

 

■まずは日経平均でトレーニングし、それから個別の銘柄へ。

初心者であればこそ、深く考え悩んでしまうのではなくシンプルに考えよう。それには日経平均に投資をするのが一番だ。また、日経平均についてはニュースや新聞でもその変動理由が報道されるので、次に個別の株式の購入や投資信託を購入する時に必要となる今後の価格の増減のイメージをするトレーニングにも大いに役立つ。初心者こそぜひ日経平均ETFから初めてみよう。

世界的な貿易戦争が始まった。  

 

■米朝首脳会談で世界が平和になるかと思われたが…

米朝首脳会談が実現し、ようやく世界が平和になるかと思われたところ、2018年後半に入り、米中の貿易戦争がはじまりだした。またトランプ大統領は中国だけでなく、日本やEU、カナダ等の諸外国にも同様に輸入制限や関税をかけだした。世界全体に対して貿易戦争を仕掛けたとも言える処置だ。

 

■アメリカファーストを当初より打ち出してはいた。

トランプ大統領は当初より、自国アメリカを最優先にするべくアメリカファーストを打ち出していた。大統領や総理、首相といった政治的主導者が自国の利益を最優先に考える事は間違ったことではない。しかし、度を過ぎた自国利益優先は他国からの反感を集め、長期的には自国の利益を損なう可能性が存在する。

 

■米中貿易戦争の開始。

貿易戦争の引き金になったのは、トランプ大統領が「米国の安全保障に対する脅威」に対抗するためとして鉄鋼製品を25%、アルミ製品を10%の関税をかけたことに始まる。その後、「米国の知的財産が侵害された」として中国からの電気製品や自動車などのハイテク分野に対しても25%の関税を付ける事とした。

 

これに対して中国も黙っておらず、大豆やとうもろこし、トラックや航空機などの米国の主要産業とも言える分野に対して同じく25%の関税を課すと共に、それに対してアメリカは追加関税も検討と揺さぶりをかけており、報復のやりあいが発生している状態になっている。また、中国以外のEUやカナダ等についても、対米報復として対抗処置を打ち出しており、世界的な対米貿易戦争が始まりつつある。

 

■軍事戦争の多くは経済が発端

貿易戦争というと、軍事戦争と比べて平和的にも見えてしまうが、過去の戦争や世界大戦についてもすべからず理由は「経済」であった。第二次世界大戦において、ドイツやイタリアがファシズムに走ったのは米国を発端とした世界恐慌およびニューディル政策やブロック経済による対外関税、現在の貿易戦争の構図と同じものであった。大東亜戦争時代の発端となったABCD包囲網も経済制裁だ。貿易戦争による経済への影響はそのまま軍事戦争につながりかねない。

 

■現時点では米国の勝利が濃厚か

現状、米国のダウや中国の上海指数をみている限り、米国のダウが上昇している。世界の投資家は米国が勝利する未来を想定しているようだ。しかし、この貿易戦争の影響でZTEが破綻し国営化されたとの報道も出ており、中国が今後本格的な報復に出ていく事も想定される。そして、中長期的には当然に日本も大きな影響を受けるだろう。軍事戦争に発展しないことを祈ると共に、日本経済に今後どの様な悪影響を与えていくか予断を許さない。

同一労働同一賃金を履き違えると再チャレンジが難しい社会へとつながる

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■働き方改革法が成立

6月28日に「働き方改革法」が成立した。
この「働き方改革法」の中では「正社員と非正規労働者の不合理な待遇差を無くす」ために同一労働同一賃金を目指すとしている。

おそらく多くの人が「正社員であろうと非正規(アルバイト・派遣等)であろうと、同じ仕事であれば給料も同じにするべき」として、歓迎すべき事だと思い込んでいる。

しかし、この同一労働同一賃金の考え方は再チャレンジが難しい社会へとつながる考え方である。

 

■同一労働同一賃金が既に適用されている外資系企業では

「成果主義」「激務」「使い潰される」といったネガティブなイメージで語られる事の多い、投資銀行をはじめとする外資系企業。

実は外資系企業の多くが既に同一労働同一賃金に近い給料体系を設定している。

多くの外資系企業では採用のタイミングや年に一回の上司とのミーティングの際、自分が今年一年間担当すべき仕事が明示されアサイン(割り振り)される。
非営業職であるバックオフィス(経理財務人事法務等)やミドルオフィス(決済業務リスク管理等)が最もわかりやすいが、例えば経理部の場合、

「日々の支払い業務   :  月〇時間、難易度〇」
「月次単体決済業務   :  月〇時間、難易度〇」
「月次連結PKG作成業務 :  月〇時間、難易度〇」
といった形で業務が明示され、その業務量や難易度の積み上げで給与や賞与が決定する場合が多い。

また、同時に中途採用においても

「銀行単体決算業務経験者」「連結決算業務経験者」

といった形で募集が行われる。未経験者が採用されることは少ない。

履歴書よりも業務経歴書が重視される世界であり、経験=賃金であり、経験がない者にはチャンスさえ与えられない世界だ。

 

■「経験が重要視される」社会

これが意味することは「業務経験があれば学歴等は不問」という事であり、見方を変えれば「業務経験がない者」は採用しないという事となる。

そして、この「業務経験」を得れるか否かは「新卒採用での就職先、配属先」によって決定してしまう。新卒採用のタイミングで就職活動に失敗してしまったり、就職後に違う業界に転職を行おうとした場合、「未経験」となってしまい採用されない、もしくは0からのスタートになってしまう恐れがある。

同一労働同一賃金が厳格に運用されてしまった場合、個人営業部門に配属されてしまったら、個人営業については経験があるがバックオフィスについては経験がないため、異動・転職が出来ない状況になりかねない。

 

■同一労働同一賃金は見方を変えた成果主義

また、同じ労働(結果)であれば同じ賃金という考え方は、言い換えれば「立場ではなく仕事の成果(能力差)によって給与を出す」と言い換える事も出来る。

例えば2万円の賃金が貰える業務を経験や能力が高く1日で出来る者と、未経験で2日かかってしまう者がいた場合、1日で出来る経験者は日給2万円だが2日かかる未経験者は日給1万円となってしまう。

これが20営業日続いた場合、この月の給与は経験者は40万円だが未経験者は20万円と2倍の差が発生する。そして多くの場合、経験者には更に上位で賃金が高い業務が与えられていき、その差は開いていく。これは俗にいう「成果主義」と何が違うのか。

もっとも、高能力の非正規の者にとってはとても良い制度だ。経験と知識があれば短時間で高収入を得ることが出来る可能性がある。

既に一部のITや法務、税務、また医療の世界などでは、難易度の高いプロジェクトや手術に一時的に参画し、高収入を得ている者も数多くいる。「結果に応じた賃金」が貰える事は彼らの様な高能力の者にとっては望ましい社会だ。

 

■同一労働同一賃金を履き違える事は危険

皮肉にも、現在我が国で同一労働同一賃金を叫んでるのは、「経験が少ない非正規雇用の為」だとしている場合が多い。

しかし、厳密に同一労働同一賃金の運用が行われた場合、彼らは未経験である以上、ステップアップが極めて難しくなってしまう可能性が高い。

また新卒採用の重要性が現在よりも高くなってしまい、現在以上に新卒採用のギャンブル化が進む可能性、また米国同様に、大学院までの進学により「専門性が担保」されて初めてある程度以上の企業へ就職出来る世界になりかねない。またそれは、大学院進学が出来る資産の有無が重要となる事と同義であり、まさに階級の固定化にもつながる恐れもある。

 

「正社員と非正規労働者の不合理な待遇差を無くす」事は歓迎すべき事で推進すべきだ。しかしそれにより、「同一労働」を行う所まで進むことが出来るチャンスを潰すことになってしまっては本末転倒だ。また共産主義的な形となってしまっても労働意欲のマイナスにしかならない。同一労働同一賃金を履き違えると再チャレンジが難しい社会へとつながってしまう。問題の本質は賃金ではなく、正社員と非正規で機会が平等ではなく、再チャレンジが出来ない事だったはずだ。問題の本質がぶれる事なく運用される事を期待したい。